STORY OF Flowrame-

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今さら「ベンジャミン・バトン」見る メタ要素が気にならず、じんわり感動できた自分にも感動

2時間半強も耐えられるか不安だったが、それは杞憂だった。

 

映画は年に1、2回しか見ないが、タイミングが重なり、いまさらながら「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」を鑑賞した。逆行する時間の中で、すれ違いながら愛と死について考えさせるような、そんな映画という印象だ。小難しそうだったが、気づいたら時がたつのを忘れて画面に張り付いてしまった。

 

 

衰弱した老体を80歳で生まれ、年を取るごとに若返っていく数奇な運命の下に生まれた、主人公ベンジャミン・バトンの特別な人生の物語。

https://warnerbros.co.jp/home_entertainment/detail.php?title_id=2614/より引用)

 

印象的なセリフに、序盤で老人が言った「周りと違っている人間は、孤独で生きていかなければならない」というものがあった。ベンジャミンは基本的に良い出会いに恵まれていたと思う。ただ、どんどん若返る身体と成長する精神との葛藤、そこから生じる様々な問題を抱えながら、内心は孤独に生きていた。周りと歩調が合わず、ようやく合ったと思ったら束の間、自分は若返って、相手は年を取り、また距離が開いていく。

 

特に恋においてはそのつらさが顕著に描かれている。幼馴染のような存在のデイジーとはすれ違いの連続だった。やっと年齢差が近づき、結ばれたのもつかの間、今度はどんどん年齢差が離れていく。やがて子供になってしまう自身の様を想像し、このままではいけないと決意し、デイジーの元を去り、孤独を受け入れるベンジャミンの様は切ない。

 

コメディー要素はあまりない、純粋なヒューマンドラマだが、興味深い方の意味で非常に面白かった。2時間半強と結構長い話だが、人生の区切りでごとに20分前後のチャプターに分かれているような描かれ方がなされており、見やすい。ベンジャミンの一生が描かれているが、場面ごとのメリハリが効いているところが良い。

 

年を取るごとに若返るというぶっとんだ設定だが、それ以外の設定はごく普通だ。個人的には、いつもならば、そもそもなぜこんな特性を持って産まれたのか、なぜ周りはベンジャミンの奇妙さにもっと突っ込まずに受け入れているのか、日ごとに若返ることに気づかないのか、のメタ要素が気になってしまう。しかし、そんなことはすぐに忘れるくらい、中身がしっかりしていて、見入ってしまった。見終わったら特に前向きになるでも、悲しくなるわけでもない、すっきりしながらもじんわりと感動する後味。たまにはこういう文化的体験も良いなと思えさせてくれる作品だった。